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曾我蕭白(Soga Shouhaku)ーー心のうちをさらけ出し「狂」を原点として描ききった画家

 最近のNHK日曜美術館で取り上げていた曾我蕭白の特集に強い印象を受けました。

 江戸時代に、一方の写実の大家、円山応挙と対抗しながら、あまりに荒ぶる内面をさらして、ほとんど狂人として無視され、二百年を経てようやく発見された巨人でもあります。

 しかし、当時の文人の間では、自分らしく生きるには、内面の自我を露出させ、狂の域にまで達しなければかなわないという思いもあったようです。自らの同一性とか、自我を突き詰めようとする、意外に深い個人の存在への問いかけが時代の底流をなしていたのかもしれません。

 若くして身寄りや家業を失い、筆一本に賭けなければならないところに投げ出された蕭白は、そのような時代背景をしょわされる宿命も帯びざるを得なかったのでしょう。放浪の身を時代にさらして、画家自身も、肌にひりつく問いかけを強く感じていたにちがいありません。

 数多くの天才たちの歴史が山ほど物語っているように、そこには時代との(世俗的な)幸福な出会いはなかった。生まれるはずもなかった。

 ひとたび敏感に時代の自我を悟った画家は、自ら「鬼神斎 曾我蕭白」と名乗って署名します。そこには深い疎外感と苛立ち、荒ぶる魂を見る思いがします。

 彼は、「狂」として振る舞い、人々を驚嘆させて時代を揺さぶってみせなければならない密かな使命も感じていたにちがいありません。

 ゲストの村上隆氏は、蕭白が自らをパロディ化したのだと、氏らしい滑らかな口調でさらりと説明してみせました。欧米を舞台に広く活躍し、常にアイデンティティの問題を突きつけられている氏らしいお話だと感じました。しかし、表面的なところから深い部分まで幅広いニュアンスのあるこの言葉が、もし酔いに猛り狂っている最中の画家自身に、その表面的な意味のみしか伝わらなかったらどうなっていたか? 思うだけで、ひやりともなりました。

 作品では、「雲龍図」「唐獅子図」などの猛々しさもさることながら、「群仙図屏風」     「雪山童子図」「商山四皓図屏風」「寒山拾得図」「竹林七賢図」など、強いメッセージが籠められているのに感銘を覚えます。

 最晩年作の「石橋図」に至っても、極楽浄土へ渡る橋から、到達できずに次々転落する獅子の図は圧巻です。

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