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パトリック・モディアーノの小説「La Petite Bijou」 Patrick Modiano(folio3766 Gallimard)-失踪した母の影を追って、パリの憂愁をさ迷い歩くーフランスの現代小説

パトリック・モディアーノの小説「La Petite Bijou」 Patrick Modiano(folio3766 Gallimard)-失踪した母の影を追って、パリの憂愁をさ迷い歩く

 地下鉄のシャトレ駅で、ラッシュアワーの人ごみの中に、黄色いコートの老女の姿がふと主人公の目に止まります。主人公は、十年余り前に失踪した母の姿をそこに見て、そっと跡をつけていきます。

 こんな始まりの小説ですが、若い女性の主人公は、戸惑いつつ老女に話しかけるには至りません。そこから思い出と自分探し、母の安否を求めるパリでの孤独な探索が始まります。Photo_2

 主人公は、かつて住んでいたアパルトマンの微かな記憶、ダンサーだった母が踵を痛め夢を断念せざるを得なかったときの自分との葛藤、失望から失踪の動機に至ったのではない かという堂々巡りの思いとか抱きながら日々の生活を送るようになります。

 それから出会う人々やパリの街並みは、すべてこの記憶の探索に巻き込まれていきます。幼女を世話する仕事に就いて出会う家族や子供、世界中のラジオ局から番組を聴いて翻訳している不思議な男とか、主人公の孤独の中に紛れ込んでくる人々も、どこかパリの憂いを帯びた人々を実感させます。

 何よりもフランス語が平易でリズミカルで、読書の快感を掻き立ててくれます。この本をポケットに入れて読みつつ東京の街を歩いているとき、ちょうど夕もやがうっすらかかったパリの街をぶらついているような二重の気分に浸りました。

 時間も越えて、かつてパリで絵画の個展を開いたとき、画廊のご主人宅に泊めてもらって、街の人々の生活に直に触れた時をもくっきり思い出しました。画廊の周りには入り組んだ小路があって、細かな日用品を求めてその迷路を巡るのも楽しみでした。

パトリック・モディアーノの本

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