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ムンクの「叫び」:美の巨人たち

ムンクの「叫び」・美の巨人たち放送「叫び」ムンク  あまりにも有名な作品ですが、画家の心の軌跡とともに見ると、改めて深く引き込まれるものを感じます。

 幼くして母を結核で失い、その後も家族が次々と心身の病に冒されて亡くなっていく嵐が画家の心の底で吹き荒れていました。底知れない不安の中で、画家はついに血のように染まった空の中に、世界を果てしなく貫く叫びを聞くに至ります。自らの血の中に巣食った狂気と死への不安に、画家はどれほど脅えおののいていたことか。その不安の極まりを、象徴的にこの作品に見る思いです。

 このどん底の「叫び」を巡って、画家の一連の愛と苦悩の深い作品が無数に描かれています。報われない人妻との愛と嫉妬の苦悩を赤裸々に告白する作品群には、人間を直視しようとした画家の主題と表現への強い意志が感じられます。

 生涯結婚しなかった画家が「自分の子供たち」と呼んだ無数の作品を、どう並べて展示するかこだわり続けたというのには興味深いものを感じます。一枚ずつの断片に区切られた人生ではなく、主題ごとの思い出を並べることによって、一つの音が貫き始め、交響曲のような壮大な物語が生まれることを画家が強く自覚していた表れです。そのことによってのみ自分の人生が意味を持ち、狂気と死への強い不安から救われることを画家が知悉していたことをも見る思いがしました。

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