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感動を通り越して言葉を失う体験

 年の功だろうか。一日の内に出会う感情の密度の濃さ、頻度はかつてに比べて計り知れない。
 様々な知らせや出来事に一喜一憂する中で、全ての感情を貫いて心洗われるメッセージをフランスの友人から受け取った。今回の小説「孵化」の翻訳を進めてくれているマリー氏からだが、彼女からは35年に及ぶ友情の中で、数え切れないほどの感動を与えられてきたことは他でも書いた。
 翻訳を巡る打ち合わせのメールはひっきりなしで、常にこの小説に賭ける彼女の熱い思いが伝わってくる。フランス語の翻訳も大詰めに至り、出版のプロモーションの言葉も、よいものが書けたと弾む気持ちが伝わってくる。これで、小説と絵に関心を持つよい読者を獲得できるでしょう、と。
 散々苦労をかけたところへ、せめて翻訳料の一部を負担させてくれという願いも一切ことわった。ヨーロッパの経済危機の中で、極貧と戦いながら目的を貫いてくれた。小説の成功に全てを賭けてくれたのだ。
 ああ! 思わず嘆息が漏れ、腰から力が抜けた。感動は言葉を越えていた。身体の中で、骨がバラバラ崩れる感じがした。
 35年前の出会いのころ、表参道のカフェで「フランスのエスプリとはどんなものですか?」と、ぼくが唐突に訊いたのに対し、「それは、これからのお付き合いでわかるでしょう」と彼女は事もなげに答えた。それからの感動の付き合いは、その言葉を具現してきた。
 国際水準の付き合いということを、このごろ考えている。ぼくたちの付き合いは、一言一句記憶に刻まれている。彼女は、ぼくたちの付き合いの始まりから、手紙や写真などありとあらゆるものを蔵っておく箱を持っている。その中から、時々思いがけないものを取り出して見せてくれる。
 厚みのある歴史のようなものを感じる。お互い一生懸命、その歴史を穢さないように、常に高いものを目指してきたような感じがする。
 いつまでも不思議で魅力的な異国の魂に励まされ、どこまでも走り続ける力を鼓舞される。

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